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野村工務店にまつわる数々の資格

ERP導入作業開始直後と導入活動方針見直し直前の二つの時点における当事者間のコンテキスト・ギャップについては、以下の特徴がある。
@ERP導入作業開始直後においては、利用者と提供者との間で、正当性および妥当性のコンテキスト・ギャップは存在していない。
皆が、パッケージに大きな期待を持っていた。 Aしかし、ERP導入作業開始直後において、利用者と提供者の間で、技術制約上の不可避性についてコンテキスト・ギャップが存在する。
これは、パッケージの仕様が分からない状況で検討をスタートすることに関するギャップだった。 B導入活動方針見直し直前になると、正当性、妥当性、不可避性のすべてのコンテキストにおいて利用者と提供者とでギャップが見られる。

この結果、検討されたシステム(パッケージ)が、この会社に定着することはなかった。 上記5つの分析結果を踏まえ、コンテキスト・ギャップの状況を示すと、Cのようになる。
すなわち、B社では、コンテキスト・ギャップは、ERP導入作業開始直後には、(ERPに対する幻想ともいえる期待から)技術制約による不可避性のコンテキストを除き全く存在していなかったが、導入活動方針見直し直前に至るまでに、正当性、妥当性、不可避性のすべてのコンテキストともギャップが増大した。 B社の事例やその他の事例から、私は次のことが情報システムに関わるコンテキスト変化について言えると思っている。
@妥当性のコンテキストは、情報システムの導入プロセスの進行に伴い、情報技術の社内での認知が変化して短期間に変化する場合がある。 A正当性のコンテキストはこだわりや価値観の問題である。
が、導入プロセスでの説得や受入れによって変化しうる可能性を持つコンテキストである。 B技術制約上の不可避性コンテキストに関しては、いくら社内における情報システムの導入プロセスが進行しても、取り扱う情報技術そのものが変わらない限り、変化しにくい。
C利用者側のコンテキストは、導入プロセスの進行に従って、新しい情報システムの認知が進むにつれて、システム認知と現実の経験や現場的問題意識を対比することから形成される。 これに比して、提供者側のコンテキストは現場の経験から遠い分、当初のアイデアから変化しにくい。
Dギャップを解消する方法には、利用者側のコンテキストを提供者側が受け入れる、提供者側のコンテキストを利用者側が受け入れる、利用者も提供者も保持していなかった第3のコンテキストを双方が受け入れる、双方が歩み寄り妥協する、の4つがある。 と考えられる。
E大きなギャップが解消されずに残る場合には、導入プロジェクトの見直しを行わざるをえない(ビックバン社の事例では、妥当性、正当性、不可避性の3つのコンテキスト・ギャップがすべて解消されなかったそのため、プロジェクトの全面見直しを行わなければならなくなった)ERPのコンテキスト変えやすい認知コンテキストと変えにくい構造コンテキストコンテキストは、それが変化しやすいものかどうかという視点から分類することもできる。 たとえば、「ERPで2000年問題が解決する」というコンテキストは、検討しているERPについての理解が進めば変わる可能性があるものだ。
また、ERPベンダーとしても、対応(改良)しやすいコンテキストでもある。 しかし、「このERPは、MRPシステムを前提にしている」というコンテキストを変えることは難しい。

前者の変えやすいコンテキストを「認知コンテキスト」、後者の変えにくいコンテキストを「構造コンテキスト」と呼ぶことにしよう。 ERPソフトの内容は、ベンダーによって異なる全部を一括して論じることはできない。
私は、その全部に批判的であるわけではない。 私が問題を感じるのは、「パッケージに合わせて業務を変えろ」と主張するERPソフトである。
この考えは、前述したようにERPが持つプロセス・モデルとその背後にある。 コンテキストの押しつけであり、コンテキスト・ギャップが解消されない限りそのシステムはうまく動かない。
たとえば、B社が導入を検討していたパッケージでは、「確定受注に基づいて資材発注を行う」ようになっていた。 しかし、当社では、「正確ではないかつ変更が頻繁な引き合い情報に基づいて、リードタイムの長い部品を調達する」ことで納期競争力を保ってきた。
これは、このERPパッケージのプロセス・モデルと当社が妥当だと考えるプロセス・モデルにはギャップがあるということだ。 そのギャップの背後には、このERPパッケージの「部品調達は受注確定後に行われるべきだ」というコンテキストがある。
ただし、これは、見込み発注機能の追加で対応できるので、変えやすい認知コンテキストだといえる。 B社が導入を検討していたERPパッケージは、「MRPで生産計画を立てる」ことを前提にしたものだったが、B社は「需要予測が成り立たないことを前提にしたマス・カスタマイゼーション(大量・個別生産方式)型の方式をとっていた」したがって、このERPパッケージはB社にはもともと不向きだったのだ。

「MRPで生産計画を立てる」は、このERPパッケージにとって、変えにくい構造コンテキストである。 主流ERPパッケージの2つの限界現在、我が国で主流となっている。
ERPパッケージの構造コンテキストが抱える問題点について整理しておこう。 @MRPシステムの採用主流ERPパッケージはそのコアとなる生産情報システムとしてMRPシステムを採用している。
MRPシステムは、「タイムバケット」概念によって成り立っている。 これは、製品の需要を一定の時間単位(タイムバケット)ごとに予測し、部品や材料の調達計画もタイムバケットごとに計算するものである。
タイムバケットのサイズは任意に決めることができるが、短いと計算頻度が膨大になるため、通常長いところで1週間、短いところで1日が目安になっている。 タイムバケットを利用することは、製品がかなりの期間にわたって繰り返し生産されることを前提とすることに他ならない。
また、その計画に従って部品や材料を標準リードタイムだけ前の時期に調達するよう計画する。 したがって、個別受注生産であったり仕様変更が頻発する企業には向かない。
また、資材・部品の所要量計算の過程で、製品生産するタイムバケットと同じ時間帯で前工程が使用される部品を生産することは許されない。 確定させた受注に必要な資材・部品をタイムバケットごとに展開して発注するのだから、少なくともタイムバケット1単位分だけ前の部品を生産することになるからだ。
組立部品と孫部品の関係も同様である。 このため、最初の素材投入から製品完成までの「計画リードタイム」は、臨機応変に生産する(たとえばかんばん生産)場合の実際の生産リードタイムの数倍から数十倍になってしまう。
その結果として顧客注文納期より生産リードタイムが長くなり、確度の高い需要予測を行わなければならなくなる。 しかし、リードタイムが長いと予測が当たりにくい。
また、リードタイムが間延びすると、生産設備などに余裕ができ、稼働率が低下しがちである。 タイムバケットの発想では「何を、いつ」がまず固定され、「幾つ」が後で決められる。
したがって、製品仕様が変更されると部品や材料の「いつ」のものを変更すべきか分からなくなり、困ってしまう。

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